69歳女、独居の兄を看取り150万負担——中川潤『金融機関は法定相続人以外に払い戻せない』

【2017年4月22日放送/ニッポン放送『テレフォン人生相談』】

一ヵ月前に独居の兄を亡くした六十九歳の妹が、葬儀費用百五十万を立て替えた。兄の口座には九十万、互助会の死亡給付金は五十万。せめてこれを受け取れないかと番組に問うた。

兄には四十年前に別れた娘が一人いる。生前、行き来は途絶えていた。

スタジオの中川潤弁護士は、相談者を労いつつも、現行法のクールな線を引いた。

相談の背景

救急搬送の連絡で初めて知った兄の困窮

兄は賃貸住まいで、家賃を滞納していた。一週間の入院ののち、亡くなった。

救急搬送時、兄の携帯には妹である相談者が連絡先として登録されていた。それで電話が回ってきた。

「兄が嫌がって、わたしが連絡入れても、ほとんど携帯も切ってえ・・いたってことですね」

喪主は妹、列席は別居中の夫と子どもたち

相談者は喪主を引き受け、葬儀を仕切った。集まったのは妹、二十年以上別居している夫、相談者の子どもたちだけだった。

葬儀・入院費の合計は百五十万。今後も納骨と墓碑への名入れで数十万かかる見込みだという。

兄の遺産は娘へ流れる仕組み

兄の娘とは、相談者自身も赤ん坊の頃に一度会ったきり。連絡先すら分からない。

それでも法定相続人は娘だ。兄名義の不動産も、口座の残高も、互助会の一時金も、本来はすべて娘に帰属する。

中川潤「相続人以外には払えない」

金融機関の壁は事情を聞かない

相談者はすでに銀行と互助会に出向き、断られていた。中川弁護士はその対応を当然と説明する。

「金融機関側としては、法定相続人がいる以上は、葬儀を実際差配されたとしても、当然にそちらへお渡しするってことが、現実問題としてできない」

葬儀費用は喪主の自腹が立前

相続人同士であっても、葬儀費用は共益費にはならない。常識的には皆のためと考える場面でも、法律上は喪主負担が原則とされている。

「喪主が葬儀費用、ほいで香典共々、別途、喪主負担っていうのが、一応、相続人間では立前なんですよ」

中川潤「事務管理という小理屈」

相続人ではない妹に残された道筋

相談者は兄の相続人ではない。だからこそ、赤の他人が緊急に肩代わりした「事務管理」として、僅少の預金から費用を請求する余地がある——中川弁護士はそう示唆した。

「赤の他人がやったのと同じように、事務管理行為としてやったんだという理屈が、立たないわけでもないような気もするのね」

姪の了解を取り付ける作業は避けられない

金融機関の払い戻しを動かすには、結局のところ娘本人の同意が要る。事情を説明し、相続人の意思として銀行に伝えてもらう必要がある。

「その娘さんが、ごくノーマルな方であれば、事情を説明すれば、常識的には普通は応じるはずでしょ」

中川潤「弁護士に手紙を書いてもらうのが一番」

面倒だがそれしかない

娘の連絡先すら分からない相談者にとって、その作業は重い。中川弁護士の処方箋は、専門家に委ねる選択だった。

「もしお願いできるんであれば、その弁護士から、今言ったような趣旨の手紙でも書いてもらってやるってのが、一番できれば、それが一番いいですよ」

番組の結び

「お役に立てなくてごめんなさいね」と中川弁護士は電話を締めくくった。加藤諦三は今日の一言を読み上げる。

「葬儀には、その人がどのように生きて来たかという人生が表れます」


放送データ:2017年4月22日(土)/ニッポン放送『テレフォン人生相談』/パーソナリティ:加藤諦三/回答者:中川潤(弁護士)/相談者:女性69歳・一人暮らし・夫とは20年以上前から別居中・子は独立/1ヶ月前に独居の兄が死去
関連キーワード:法定相続人/事務管理/葬儀費用/互助会給付金/預金凍結/姪の相続権/喪主負担
出典:ニッポン放送『テレフォン人生相談』2017年4月22日放送分
著者:人生相談を聞くのが趣味な男

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