半年で母の貯金1500万が消えた——坂井眞『下ろせるのはあなただけ。成年後見人で第三者の目を入れろ』
【2020年1月31日放送/ニッポン放送『テレフォン人生相談』】
八ヵ月前に九十五歳の父を見送った六十三歳の妹が、九十二歳の母の通帳を見て凍り付いた。半年で千五百万が消えていた。
カードを握っているのは、近くに住み母の世話をしている六十七歳の姉だけだ。詰めても返ってくるのは「知らない」「任せてある」。
スタジオの坂井眞弁護士は、押し問答に終止符を打つために、家庭裁判所という外部装置を持ち出した。
相談の背景
遺言で全財産は母へ、執行は未着手
父は自筆証書遺言を金庫に残していた。「すべて母に」と書かれていた。
遺言執行も不動産の登記移転も、誰も手を着けていない。母名義の現金・定期は約四千万、不動産は別途。
半年で千五百万が普通預金から消えた
四十九日が過ぎ、初盆と法事のために集まった折、弟が母の通帳を開いた。
三日と空けずにATMで五十万。半年積み上がった出金額は千五百万を超え、定期にまで手が伸びていた。
「もうとてもじゃないんですけど、母が一人に使うようなものではないんですね」
「知らない」「任せてある」の押し問答
姉に問えば「さあ、分からない」「お寺にどうのこうの」と言葉を濁すばかり。母も「知らない、任せてある」と繰り返す。
困ったケアマネージャーは、老人ホームの予約と任意後見人の手配を勧めた。
坂井眞「あなたしか下ろせない」
九十二歳の母が独力でATMに行くはずがない
坂井弁護士は、姉の論法を法律論ではなく現実論で崩しにかかった。母は自分でカードを使って引き出せない。遠方の三人もカードを持っていない。
「下ろせるのはあなただけじゃないですか?って話ですよね」
「『この日にあなたが下ろしたんだったら、知らないというのは答えになってないですよ』というふうにまず言うことは可能ですね」
母が真実任せているなら他の兄弟は口を出せない
ただし、と坂井弁護士は理屈の話をはさむ。母が本心から姉に管理を委ねているのなら、月々の出金額がいくらであろうと他の兄弟には介入する筋がない。
「自分の財産どう使うかはお母さんの勝手だという、そういう理屈はあるわけですよね」
坂井眞「成年後見人を入れて第三者の目を通す」
家庭裁判所が紛争事案には外部後見人を選ぶ
母の判断能力に陰りがあり、そこにつけ込まれている疑いがあるのなら、成年後見人の申立てが現実的な道になる。
近くに住む子が選ばれることが多いが、姉が反発する見通しの本件では、家庭裁判所は第三者の弁護士などを選任する公算が大きい。
選任後は財産目録と過去の出金調査が始まる
後見人は就任後すぐに財産目録を作り、裁判所へ提出する義務がある。直近半年で千五百万が消えた事実は、当然そこで俎上に上がる。
「『知らない』とかいう答えだと、理由がはっきりないわけだから、それは返してもらわなきゃいけないということになって」
「自分が後見をしている被後見人の財産を、不当に支出させているから返せという請求をして、場合によったら訴訟になったりすることもあります」
坂井眞「老人ホームでお姉さんから引き離す」
ケアマネの助言は財産防衛として理に適う
老人ホームへの早期入居は、母を姉のそばから物理的に外す装置でもある。
「勝手に財産に手をつけられないようにするという現実的な対応ですよね」
番組の結び
「先が見えて、解決法ちょっと分かって来ました」と相談者は引き取った。今井通子は四人で家庭裁判所への申立てを検討するよう促した。
放送データ:2020年1月31日(金)/ニッポン放送『テレフォン人生相談』/パーソナリティ:今井通子/回答者:坂井眞(弁護士)/相談者:女性63歳・4人きょうだいの三女/父95歳が8ヶ月前に死去・母92歳・近隣に住む姉67歳が母を世話
関連キーワード:成年後見人/自筆証書遺言/遺言執行/預金引き出し/財産目録/カード管理/不当利得返還請求
出典:ニッポン放送『テレフォン人生相談』2020年1月31日放送分
著者:人生相談を聞くのが趣味な男
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