名士の家の長女28歳、嫁ぎ先の“無粋”に苛立つ——加藤諦三『形にしがみつくのは自信のない人です』

【2016年6月18日放送/ニッポン放送『テレフォン人生相談』】

ニッポン放送『テレフォン人生相談』2016年6月18日放送分に、半年前に入籍したばかりの28歳女性から「嫁ぎ先の家族が受け入れてくれる気持ちがないなら、こっちも入っていきたくない」という相談が寄せられた。

地元の名士の家に育ち、「長男長女」の結婚で名字を失う側。結納を省略すると告げた義母の一言に気持ちが折れたという。

回答者のマドモアゼル愛と加藤諦三は、問題は義母ではなく、相談者自身が「家」にしがみついていることだと切り込んだ。

相談の背景

長男長女の結婚、消える名字

相談者は女性28歳、同い年の夫と2人暮らし。半年前に入籍し、数ヶ月後に挙式を控えている。同居の予定はない。

相談者自身が「長男長女」であり、結婚によって実家の名字は途絶える。

「名字が変わって、そちらの家に入るっていうことに凄く抵抗があるんです」

彼の親族への不満も、そこに乗っている。

結納「無しって事で」

相談者の地元では結納をきちんとやるのが礼儀とされる。相談者もそのつもりでいた。

しかし義母が言い切った。

「お金が掛かるから、無しって事で」

実家に行くたびに、式の金の話で「また掛かるの? 出せないからね」と繰り返される。地元の風習では両親が負担する費目も、義母側は「払いたくない」の姿勢だった。

お婆ちゃんの1万円と、耳打ち

夫の母方の祖母に結婚挨拶へ行ったとき、祖母が帰り際に1万円を握らせてくれた。「これから、よろしくね」。

相談者が固辞していると、義母が耳元で小声に言ったという。

「おばあちゃんに、返して下さい」

相談者はゾッとし、青ざめながら祖母に返そうとした。結局受け取れず、「主人と一緒に使わせて頂きます」と収めた。

自分の家への誇り

相談者は自分の実家を「地元では名主」と位置付け、「周りからも良いお家だと聞いていた」ことが結婚を決めた要素の一つだったと語った。

入ってみたら違うところが見えた——と相談者は言う。

マドモアゼル愛「結婚を決めた要素が間違っていた」

家というアイデンティティ

マドモアゼル愛はまず名字の話から入った。

「名前が変わるって、誰と結婚したって、最初から分かってる事だよね?」

そのうえで、より深い問題に踏み込んだ。

「あなた自身が、家っていう概念に、結構縛られてるよね?」

相談者は「そうなんです」と認めた。

誇りの奥にあるコンプレックス

「名士って言われる人、日本にも居るけれども、よく知っちゃうと、同じだよね? 人間として」。

家柄に乗った「誇り」の正体を、マドモアゼル愛は別の言葉に置き換えた。

「コンプレックスだと思うのね、僕。本当は」

相談者は、自分だけが親族内で学歴などの面で劣っていたと打ち明けた。

「比べられて、受け入れ難いものを、しょうがない物差しとして、受け入れてしまった。魂では、本当は反発してたのかもしれないよ」

義母の言葉は「釘刺し」

義母の金銭発言についても、マドモアゼル愛は別の角度を示した。

「『あの家のお嬢さんを迎えるには、正式にやったら大変な事になるよ』という思いが、あったわけじゃない?」

「だから、お金掛かる事できないよと、釘を刺していた」

相手に悪意はなく、動機はわかる——そう整理したうえで、マドモアゼル愛は本丸に切り込んだ。

「本当に愛情を優先したならば、こうした問題は、付帯する問題として処理できるはずなのよ」

加藤諦三「形にしがみつくのは、自信のない人です」

誇りではなく、自慢

加藤諦三は、相談者が繰り返し使った「誇り」という言葉を詰めた。

「本当に誇りになってるかしら?」

「誇りっていうか、自慢みたいな感じに、なってる——と思います」。相談者は認めた。

「そこにしがみついて生きて来てるんですよね? だから形が凄く大切になる訳ですよね? 結納とか、披露宴とか、結婚式とかね。心ではないんですよねえ」

所属感の欠如

加藤はさらに奥の心理を名指しした。

「実は、所属感の欠如なんですよ」

「本当は、あなたの誇りに思ってる親族に、あなたは受け入れられていないという事を、あなたは無意識で、知っている。だからこそ、形にこだわるんですよ」

「形にしがみつく人っていうのは、自信のない人です」

夫ではなく、この世界と別れる

処方箋はシンプルだった。

「離婚するとかいうよりも、もう、この世界をすっかり捨てたら? 夫と別れるんじゃなくて、今まで居たこの世界と別れる」

「いったん別れてみたら、『わたしはこんな事、誤解してたんだなあ』と見えて来る」

「本当にあなた苦しんでるのに、誰が助けてくれてます? 誇り誇りって、親族親族って言うけど」

番組の結び

加藤は最後に「今日の一言」を置いた。

「行き詰った時は、逆が正しい。誇りの時は、敵意です」

相談者は「色々とこだわってるのはわたしだけで、これを機に変わる方が、自分のためにも周りのためにも良い」と受けた。


放送データ:2016年6月18日(土)/ニッポン放送『テレフォン人生相談』/パーソナリティ:加藤諦三/回答者:マドモアゼル愛(心についてのエッセイスト)/相談者:28歳女性・長男長女・同い年の夫と2人暮らし(半年前入籍、数ヶ月後に挙式予定、同居なし)
関連キーワード:家柄/名士/結納/嫁入り/コンプレックス/所属感の欠如
出典:ニッポン放送『テレフォン人生相談』2016年6月18日放送分
著者:人生相談を聞くのが趣味な男

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